おいしい蜂蜜が作られるために最重要な要素はたった一つです。

蜂蜜が美味しくなる蜜源植物が養蜂場の近くにあること、それだけ。非常にシンプルな話なのです。

一般顧客目線では、購入する蜂蜜の蜜源にまで思いを馳せることはほとんど無いと思いますし、蜜源まで気に掛けるお客さんが居たらそれはもう生産者との蜂蜜トークに花が咲こうというものですね。

美味しい蜂蜜を作るために良い蜜源にアクセスする、この条件は簡単そうでいて実はとても難しいことです。

好条件の養蜂場は常に競争が激しく、既存の養蜂家は血眼で狙っています。したがいまして、新規参入で大当たりの養蜂場を引き当てることは信じられない幸運に恵まれるしかありません。

そして当園はその信じられない幸運に恵まれてしまったのだった、ということになるでしょう。

優良蜜源へのアクセスは、本当にただの偶然が重なっただけで、僕自身は何も努力しておりません。たまたま蜂を飼って、たまたま蜂蜜を搾ってみたらめちゃくちゃ美味しかったので、大チャンスを感じ取り、しっかり掴んで形にしただけというのが実情です。ゴールの前にボールが来たから蹴っただけと言う。

なので通常の養蜂新規参入の場合、蜂蜜の味の土俵で勝負に出ることはたぶんしません。ストーリーを凝って物語で差別化しようとしたり、デザインを凝ってオシャレ感を演出して差別化しようとしたり、コミュニケーションで差別化したりと、なるべく味の勝負を避けて通る戦略を取るはずです。

別にそれについて難癖をつけるつもりは毛頭ありませんが、当園は単純明快に味で勝負できます。美味しいのでぜひご賞味ください。

さて、美味しい花蜜を出す蜜源植物についてですが、個人の嗜好もあるということを差し引いても、西日本ではやはりみかん蜜が極上でしょう。

中部日本ではニセアカシアの蜂蜜が本当に美味しいです。

北海道ではクローバー蜜が良いです。

そして日本全国で言えることですが、もしもヘアリーベッチの蜂蜜を見つけたらこれも極上品ですのでチェックしておくと良いと思います。ヘアリーベッチは元々は緑肥です。花が咲く前に窒素源として圃場に漉き込まれてしまう運命の植物なのですが、ごく限られた条件下において養蜂用途としてヘアリーベッチ蜜が採れます。5月の花が終わってから田植えをする(ちょっと遅い)とか、ヘアリーベッチを撒いても良い広大な土地を持っているとか。

他にも色々と有名な花はあると思います。これは問題発言なんだろうと思いますけど、蜂蜜として昔からある有名な花だから美味しいという訳は無いです。美味しい花の蜜が美味しいというシンプルなことです。

そして、これも消費者目線ではあまり気に留めないことだと思いますので、良い蜂蜜に出会うためのポイントを生産地と絡めて申しますに、蜂蜜はめちゃくちゃ重たくて、輸送コストがとんでもなく高いです。小規模養蜂家であれ、大規模養蜂家であれ、この輸送コストはたいへんに重たい。

北海道の蜂蜜が九州で売っていたり、九州の蜂蜜が東北で売られていたり、というのは基本的には無いことだと思ってください。生産地と販売地に整合性が無い場合、ほとんど見かけないことだと思いますが、そこには必ず輸送コストが乗ってます。蜂蜜はその土地土地で作れるのですからあちこち運ぶ意味が薄い商品です。

せめて生産者から全国の消費者への片道輸送までだと思います。生産者、物流業者の段階でぐるぐると動かす物では無いんじゃないかなと。

もちろん、東京のような蜂蜜生産ゼロの純粋消費地の場合は日本各地の美味い蜂蜜が集まってくる可能性はありますが。

つまり、美味しい蜂蜜はその土地にあります。その土地土地の美味しい蜂蜜をぜひ探してみてください。あとこれ何度も言うんですが、美味い蜂蜜を買うコツは養蜂家から直接買うことですよ。